OUR PURPOSE
日本アブレーション研究会の目的
アブレーションとは超音波やCT、MRIガイド下に針状のアプリケーターなどを腫瘍内に挿入し熱で腫瘍を死滅させる治療などの総称であり、ラジオ波治療やマイクロ波治療が代表的なアブレーションです。他に凍結療法やエタノール注入療法なども含まれます。
これまでは主に肝臓の悪性腫瘍に対して行われてきました。肝癌の領域では、外科と競い合い進歩してきたアブレーションですが、2021年には、SURF trialの結果が発表され、肝切除とラジオ波治療の比較では、全生存率でも無再発生存率でも肝切除の優位性は認められないという結果でした。SURF trial は全国49の施設が2009年から6年間にわたり、肝機能良好で3cm以下、3個以下の初発肝細胞癌患者を登録し、その後5年間経過を観察したランダム化比較試験です。SURF trialなどの比較試験の結果、2021年に改訂された肝癌診療ガイドラインでは3cm以下、3個以下の症例については肝切除とアブレーションとは同等の扱いとなりました。
現在、小径腎細胞癌に対する凍結療法や副腎腫瘍に対するラジオ波治療も保険適用となっています。また、肺腫瘍や腎腫瘍、骨軟部腫瘍などに対するラジオ波治療も2022年に保険適用となる予定です。さらに、甲状腺などのアブレーションも海外では広く行われ、乳癌などの領域でもアブレーションは広まるものと思われます。
アブレーションは根治性がありながら低侵襲であるため、再発に対しても容易に対応可能であり、医療経済的にも優れています。超高齢化が進む本邦においてアブレーションは益々重要な役割を果たすことになると予想されます。
本会は、肝、胆膵などの消化器領域だけでなく、肺や甲状腺、腎臓、副腎、乳腺、骨、軟部組織などすべての領域において、ラジオ波治療やマイクロ波治療、凍結療法などすべての種類のアブレーションが安全かつ効果的に実施されるよう、会員相互ならびに関連機関との連携を図ることを目的として設立しました。
同様の趣旨の学会は、アジアでは Asian Conference on Tumor Ablation (ACTA) があり、台湾にはTaiwan Academy of Tumor Ablation (TATA)、韓国にはKorean Society of Image-guided Tumor Ablation (KSITA) があります。
日本はエタノール注入療法やマイクロ波治療などのアブレーション発祥の地であり、その技術や経験において常に世界をリードしてきました。アブレーションの新たなステージへ私たちが世界をリードしていく責務があります。多くの方々に参加いただき、臨床経験や研究成果を集積し、後進を育成し、アブレーションのさらなる発展に貢献していただきたいと考えます。
代表幹事 椎名秀一朗